研究科長挨拶

科長 高橋照子

新しい看護ケアを開拓する看護専門職を育成

 本学は令和2(2020)年に創立125周年という大きな節目を迎えた伝統ある8学部20学科を有する総合大学です。建学の精神「自立協同」のもと、平成26年4月に看護学研究科修士課程(現・博士前期課程)、平成28年4月に博士後期課程を開設いたしました。

 さて、本学が創立125周年を迎えた令和2(2020)年は年頭から新型コロナウイルス感染症に振り回されております。当初、少々甘く捉えていたわれわれの予想は大きくくつがえされ、世界的大流行が続いております。未だに収束の気配はありません。もとより、この新型コロナウイルス感染症を最前線で迎え撃っているのは医療機関です。自ら感染のリスクさらされながら活躍する医療関係者、私たち医療教育に携わる者も仲間として最大限の賛辞を呈したいと思います。

 かつて、人類は幾度となくパンデミックに見舞われました。天然痘流行に対し、仏様に頼るしかなかった聖武天皇。中世ヨーロッパのペストパンデミックでは、当時絶大な権力を誇っていた教会も完膚なきまでに追い詰められてしまいました。100年前のスペイン風邪においてすら人類は決定的な対抗手段を持ち合わせていませんでした。

 新型コロナウイルスに関して様々な事実がわかってきました。それに対し、治療薬・ワクチンの開発も急ピッチで進んでいます。仏様に頼ることを全面的に否定するものではありませんが、やはり科学的対応に勝るものはありません。「看護学」が100%科学的であるべきとは決して思いませんが、基本に科学が必要なことは間違いないでしょう。科学的思考ができる高度看護専門職の養成は待ったなしの状況と言えましょう。

 今後も未知のウイルスは間違いなく人類に襲い掛かります。問題はウイルスだけに限りません。新たに出現した様々な問題に対し、自ら考え判断し、そして結果に対し責任を持つ、この当たり前の姿勢が当然医療職にも求められます。新型コロナウイルスと対峙しつつ、そのような人材を育成する看護学研究科でありたいと強く願っています。

2020年10月



看護学研究科 研究科長 夛田羅勝義